『コーラス好きの人には一人ア・カペラ多重録音で歌う讃美歌「A Parting Blessing」やトマス・タリス「If Ye Love Me」がお勧め』
1st作品から既に「Gloria」等有名曲を持ち、着実にその音楽性が人々のこころを掴み始めているカノンの2ndは、更に充実した作品となりました。物語を盛り上げたタイアップ曲たちだけでなく、サビに安らぎと優美さを持つ2「The Power」など彼女が大切に歌ってきた曲も収録されているのです。特に12「As One」(「NHK2006ゴルフ3大オープン中継」曲)やピアノと歌声だけの13「Life」など聴き所ですよ。そんなオリジナルも5曲あります。
クラシカル・クロスオーバー曲は、エルガー「愛の挨拶」、ガーシュウイン「ラプソディ・イン・ブルー」、ベートヴェン「悲愴」、ドビュッシー「月の光」などをベースにした楽曲がありどれも、しなやかに繊細で滑らかにのびる歌声だから活きてくる仕上がりです。あまり声楽然とせず、しかしその基礎があるからこその美しさですね。
また彼女の名前を一躍広めた北条司原作アニメ「エンジェル・ハート」からの8「My Destiny」と10「Serenade」は格別で、ラフマニノフ「ヴォカリーズ」が8、チャイコフスキー「弦楽セレナーデ」が10なのですが、主題が番組の物語によくリンクしクロスオーバー曲として原曲を越える感動の瞬間効用をみました。
クロスオーバーは原曲に言葉を乗せたという単純な見方よりも、いかに新しい解釈やエッセンスをそこから引き出し、新たなテーマを表出するかだと思うのですが、彼女のそれは当に新しい物語が見えるようで、輝きと鮮やかな色彩を持った景色が生れてゆきます。言葉が伝わってくるのです。
最後に、カノンは他に「Gloria」や「Wings to Fly?翼をください」など刹那に流れてきたとき威力を発揮した歌を多く持つ歌手です。それは彼女の誠実な音楽性からくる結果だと思いますし、そのしなやかで清廉な音楽だからこそ、場面を品のよい感動で美しく盛り上げるのではないでしょうか。今作で様々なタイアップがついている特長もそんな彼女の効用が、徐々に世間に広まっている表れのような気もします。